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東京藝大 x みずほFG「アートとジェンダー」共同研究プロジェクト
「アートとジェンダー研究会」

千住 Art Path 2023 特別企画
《「地域・こども・アート」をかんがえる1日》

みずほフィナンシャルグループと本学が2023年に締結した包括連携協定をきっかけに、キュレーション教育研究センターでは、特にアートの実践の場におけるジェンダーを取り巻く諸問題をテーマにした研究活動を続けています。
この「アートとジェンダー」に関連する、こどもと貧困の問題をテーマに、2023年12月16日(土)には《「地域・こども・アート」をかんがえる1日》と題した特別企画を実施しました。

当日は、ゲストを迎えたシンポジウムを軸に、熊倉研究室所属の学生たちによる参加型のアートワークショップと、ケーススタディ発表という3つのプログラムを展開しました。藝大千住キャンパスのある足立区でも喫緊の課題となっている、こどもをめぐるさまざまな問題。アートマネジメントという視点から「地域・こども・アート」の新たな組み合わせの可能性を提案する場となっただけでなく、日々実践を重ねる来場者のみなさんから、現場の声を伺う貴重な機会となりました。

※なお、このイベントは、音楽環境創造科の進級展「千住 Art Path 2023」の一環で実施されました。

①シンポジウム「こども食堂と芸術」

写真:冨田了平

■開催概要
日時:12/16(土) 14:00〜15:30(開場:13:30)
会場:東京藝術大学千住キャンパス 3F スタジオA
来場者数:84名(事前予約優先、先着順)
出演:湯浅誠(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)、大澤寅雄(合同会社文化コモンズ研究所 代表/文化生態観察)、熊倉純子(本学音楽環境創造科 / 大学院国際芸術創造研究科 教授)、熊倉研究室所属学生ほか

■来場者の声(一部抜粋)
居場所としての機能は気付きでした。食だけではない、アイデンティティの立ち上がりにも必要な場になりえると思いました。これにはアートがあると良いと私も思います。
アーティストとお金、ボランティアを期待しがちな日本の気質を何とか変わるといいですね。金融機関にいる人間として、お金がきちんと回る仕組みを考えたいです。
(神奈川県/50代/女性/会社員)

引きこもりの若者が集う”居場所”でボランティア活動をしています。アーティストを呼んでWSを企画しても、いつも同じメンバー、人が集まらない、ドタキャン。果たして意味があるのか?と悩んでいました。ただ、参加してくれた若者には好評で「場をかき回す」アートの力を借りて、今後もより良い設計を考えたいと思いました。
又、「見守る力」の大切さ、ただ見てるだけってすごい!というお話に、ただ居るだけの自分に勇気をもらいました。
(足立区/50代/主婦・主夫)

出演者プロフィール

湯浅誠

社会活動家。東京大学先端科学技術研究センター特任教授。経済同友会会員。認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長。
1969年東京都生まれ。東京大学法学部卒。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1990年代よりホームレス支援に従事し、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。内閣官房社会的包摂推進室長、震災ボランティア連携室長など。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。
こども家庭庁「こども家庭審議会こどもの居場所部会」委員。
著書に、『つながり続ける こども食堂 』(中央公論社、2021年)、『子どもが増えた! 人口増・税収増の自治体経営』(泉房穂氏との共著、光文社新書、2019年)、『「なんとかする」子どもの貧困』(角川新書、2017年)、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日新聞出版、2012年)、『反貧困』(岩波新書、2008年、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。

大澤寅雄

合同会社文化コモンズ研究所代表、NPO法人アートNPOリンク理事長、NPO法人子ども文化地域コーディネーター協会専務理事、日本文化政策学会理事、九州大学社会包摂デザイン・イニシアチブのアドバイザー、堺アーツカウンシル プログラム・オフィサー。1970年生まれ。慶應義塾大学卒業後、株式会社シアターワークショップにて公共ホール・劇場の管理運営計画や開館準備業務に携わる。2003年文化庁新進芸術家海外留学制度により、アメリカ・シアトル近郊で劇場運営の研修を行う。帰国後、NPO法人STスポット横浜の理事および事務局長、東京大学文化資源学公開講座「市民社会再生」運営委員、株式会社ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室主任研究員を経て現職。共著=『これからのアートマネジメント”ソーシャル・シェア”への道』『文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと』『文化政策の現在3 文化政策の展望』『ソーシャルアートラボ 地域と社会をひらく』。

②キッズ向け!参加型アートワークショップ《Xenolith ゼノリス》

日時:12/16(土) 10:00〜18:00、12/17(日) 10:00〜17:30 千住 Art Path 2023 会期中常設
会場:千住キャンパス 1F 倉庫2

足立区内の小学校でもアウトリーチプログラムを実施したクロエ・パレ(アーティスト/本学GA博士課程在籍)による、インスタレーション作品が千住キャンパスに2日間限定で出現!当日は熊倉研究室の学生たちのアテンドで、千住 Art Path 2023 に来場したキッズが見事に作品とその空間を変容させました。

写真:冨田了平

③ケーススタディ発表

写真:冨田了平

ケース①「ムジタンツ」〜アートで考えるこどもと地域〜

日時:12/16(土) 16:00〜16:45
会場:千住キャンパス 1F プロジェクトルーム2「アクセスポイントくまけん」
参加者:約20名

「ムジタンツ」は、発起人である酒井と山崎が互いの専門性を持ち寄りながら、音楽と身体表現を融合させて開発しているプログラムです。本企画では「さまざまな家庭環境におかれているこどもたちの社会参加」という課題にアプローチすべく実施した「アートなお祭り」の事例を紹介しました。

発表者:酒井雅代(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科博士課程)、山崎朋(東京藝術大学キュレーション教育研究センター 非常勤講師)

ケース②「イミグレーション・ミュージアム・東京」〜多文化社会に暮らすこどもたち~

日時:12/16(土) 17:00〜17:30
会場:千住キャンパス 1F プロジェクトルーム2「アクセスポイントくまけん」
参加者:18名

イミグレーション・ミュージアム・東京(通称:IMM)は、国内に暮らす海外ルーツの人々の日本での日常生活に焦点をあてたアートプロジェクトです。2021年度から東京都足立区内の小学校と連携し、海外ルーツのアーティストとともにアート・エデュケーションプログラムを実施しています。参加アーティストの作品を展示するとともに、企画担当者が実際に行った取り組みについて詳しくご紹介します。

発表者:韓河羅(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科博士課程)、神道朝子(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科修士1年)、寺山穂(東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科2年)