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さいたま文化発信プロジェクト
アーツカウンシルさいたま×東京藝術大学キュレーション教育研究センター

「空想するさいたま」

「空想するさいたま」は、アーツカウンシルさいたまと東京藝術大学キュレーション教育研究センターが共同で実施したデジタル作品プラン/キュレーションプランの公募プログラムです。

参加者29名のうち、14名からプラン13件が最終提出され、2024年3月の最終プラン発表会・選考会では【A】デジタルコンテンツ制作プラン/【B】デジタルコンテンツキュレーション(展示・発表)プランの各部門第1位・第2位が決定しました。

2024年度以降は、採択された4プランの実現に向けて、アーツカウンシルさいたまが伴奏支援してまいります。

※本取り組みは、アーツカウンシルさいたまの事業のひとつである「さいたま文化発信プロジェクト」として、さいたま市の持つ「盆栽・漫画・人形・鉄道」という4つの地域に根ざした文化芸術に関する資源を広く若手のクリエイターやキュレーターと共に考えていくために東京藝術大学と連携して実施されました。

採択プランご紹介

【A】デジタルコンテンツ制作プラン

第1位:徐秋成「夢をみる、さいたま(仮)」

〜コンセプト文〜
生活都市、ベッドタウンにおいて、最も重要なのは睡眠であること。
人間が睡眠のなかで夢を見てる時が一番自由が感じられると言われ、日常からかけ離れた大胆かつ不思議なイメージが溢れ出す。それは現実だけではなく、歴史や記憶、民話から影響を受けている。
本作は睡眠の深さによって、4段階に分けられる。それぞれの段階とさいたまを代表とする盆栽、人形、漫画、鉄道を結びつけ、夢のなかにしかない面白さや大胆さを表現する。

〜選考委員によるコメント(一部抜粋)〜
(岡本美津子)先生たちも非常に評価されていました。いま、ベネチア映画祭等色々な映画祭がVRコンテンツに手をつけ始めており、ドキュメンタリーやドラマ等が非常に多い中、さいたまの白昼夢を見させられる、というさいたまでしか作れない、世界でここしかない、非常にユニークなオリジナリティ溢れるコンテンツを考えられて、非常に面白かったと思います。睡眠と夢と、4要素(鉄道、盆栽、漫画、人形)をまるでマジックのように結びつけている、というのも非常に面白かったと思います。

(谷口暁彦)企画書等も前日見ていましたが、ベッドタウンをポジティブに捉え直すと、本当に電車がある種の睡眠装置みたいなものなのだと気付かされるプランだったと思います。本当に実現したら、すごく面白い作品になるのではないかなと思いますので、期待しています。

第2位:Zvolinsky Leonid「オーディオビジュアル作品 “Sleeping Memory” −盆栽の知覚を通してさいたまの都市の記憶を人々に伝える−」

〜コンセプト文〜
本作品は「盆栽の知覚を通してさいたまの都市の記憶を人々に伝える」をテーマに、植物が互いに信号を伝え合うという埼玉大学の最近の研究にヒントを得て、植物と人間とのコミュニケーションに置き換えて芸術的に表現しようとするものです。さいたまの人々と強く長いつながりと歴史を持つ盆栽に眠る記憶をイメージしMax(※1)とTouchDesigner(※2)でオーディオヴィジュアル作品を制作します。作品にはさいたま市のサウンドスケープを録音し作中に使用するほか、さいたま市の実際の盆栽を使って3Dモデル化をします。また、美術館内にVRルームを作り、鑑賞者が盆栽の中に入れるイマーシブアートを想定しています。

※1:Max (Max/MSP/Jitter)はグラフィカルなインターフェースを備えたプログラム開発環境である。本来(コンピューター)音楽の作曲のために開発されたものだが、その扱いやすさからリアルタイムによる音響合成、パフォーマンスのためのインタラクティブ・システムなどに用いられるようになった。さらにマルチメディア、映像、インターネットなどを用いたメディア・アート作品にも広く用いられている。出典元:Maxサマースクール2024公式HP(https://maxsummer2024.geidai.ac.jp/)
※2:ビジュアルプログラミング言語の一つで、メディアアートの制作時に使用されることの多いソフト。

〜選考委員によるコメント(一部抜粋)〜
(小沢剛)盆栽は歴史の目撃者である、という言葉がすごく刺さりました。考えてみれば、人間は生きていると二酸化炭素を出し、植物はそれを吸って、酸素を出す、という関係性でずっと切っても切れない縁で続いてきましたよね。そのようなものを踏まえて、この作品が出来上がったのを僕は見たいなと思っていました。

(玉置泰紀)デジタル空間での体験もできると思うのですが、結構リアルのインスタレーションと同時にイマーシブにやりたいという話がすごくいいなと思いました。1回目のAMBIENT KYOTOの展示で盆栽とブライアン・イーノを合わせたものがあったのですが、盆栽とアンビエントミュージックの相性がすごく良くて。なので、盆栽美術館でもそういう素晴らしいインスタレーションができるのではないかなという気がしていて、色々提案いただいたものをさらに煮詰めれば、もう現実的に何かできるのではないかなと思いました。

【B】デジタルコンテンツキュレーション(展示・発表)プラン

第1位:西山夏海「memories of “life”」

〜コンセプト文〜
過去から現在までに、”生活都市”さいたまで営まれてきた生活を未来に向けて記憶・継承することと、デジタルコンテンツや美術の力でふとした日常が、少しでも気づきのある豊かなものになれば、と企画した。「記憶する」ことに共通の特徴がある2組のアーティストと、デジタル技術とユーモアのある柔軟な発想で日常を豊かにする学生の方々、そしてさいたま市民の方々によって4つの博物館を繋ぐ。

〜選考委員によるコメント(一部抜粋)〜
(小沢剛)西山さんのプラン、これ実現したところを是非見たいと思っていたので、すごく楽しみです。西山さんの人柄が滲み出るようなキュレーションプランなのがよいなと思いました。審査員のみなさんとも話していて、プランの実現に向けて、少し小さくしたほうがいいのではという案もありましたけど、自分の納得いくようにしていただきたいし、審査員共々、完成まで見守っていきたいので頑張ってください。

(森隆一郎)キュレーションプランで採択をしたのですが、予算面の問題もあるので、アーツカウンシルさいたまでも今後どういうふうに手伝っていけるかを一緒に考えていけたらと思っています。例えば、東武アーバンパークラインで何か出したい時、普通はお金で広告等を買っていくけど、そうじゃない方法を一緒に考えたりとか。とても素敵なものになるでしょうし、それがあまり観光に寄らないようにしていく、というのも一つの気をつけていかないといけないことかなと、実現に向けて色々と考えているところです。

第2位:吉岡雄大「SAITAMA HEARTRAIL」

〜コンセプト文〜
さいたま×電車→埼玉から全国に広がる日本の動脈
さいたまは、ベッドタウンと言われる通り、昼夜の人の流入・流出がとても激しい都市である。
それは全国に線路を伸ばし働く人・学ぶ人を巡らせている証拠であり、線路は血管、働く人や学生を血液として捉えた時に、さいたまは日本にとっての心臓といえるのではないかと考えた。
電車にバーチャル空間上の展示会場としての「臨時駅」を造り、働く社会人や学生が日常的に使う電車にいつもと違う景色を加える。

〜選考委員によるコメント(一部抜粋)〜
(岡本美津子)吉岡さん、作品プランとキュレーションプランの両方に応募されて、そのエネルギーも素晴らしいなと思いました。臨時駅というコンセプト、面白いのですが、実際の電車広告とかのプランもあったように、実際の鉄道会社とのコラボレーションを色々考えられるプランだったなと思います。個人的には、その電車に乗っていて、電車の車内アナウンスで「ただいま大宮ハートレール駅(臨時駅)を通過しております、詳しくはQRコードを読んでください」みたいなものがあって、みなさんがバーチャル展示を見始めると面白いなと。色々な妄想をさせられた、面白いプランだったと思います。乗り鉄とか撮り鉄とかあるのですが、バーチャル鉄みたいなのが生まれるのではないかと、なんて思ったりもしまして、非常に発想が豊かなプランだったと思います。

(三浦匡史)さいたまの4大モチーフを材料に考えていただいたのですが、鉄道とか人形とか、割とわかりやすいものにストレートに飛びつくのではなくて、そこをうまく「生活都市さいたま」という解釈に落とし込みながら、臨時駅とかユニークな発想に繋げてもらって、可能性が広がる提案をして下さったと思います。最初のプレゼンの後の講評で大宮の話が出て、さいたまの大宮の場合は明らかに氷川神社のお膝元になる宮の元、に起源があると思うのですが、なぜ大宮の氷川神社があの場所にあるかや、なぜ武蔵国のエリアに氷川神社がたくさんあるか等、色々な疑問の入り口に立っていて、臨時駅がさいたまを知る入り口になり得るなと思いました。

2024年3月10日(日)開催|プラン発表会・選考会アーカイブ

リサーチツアーのようす

開催概要

□第1回
日程:2023年12月2日(土)15:00~18:00
会場:東京藝術大学上野キャンパス 国際交流棟 GA講義室
第1部・ガイダンス「企画趣旨説明と期待する作品や企画について」
オーガナイザー:森隆一郎(アーツカウンシルさいたま プログラムディレクター)、熊倉純子(東京藝術大学国際芸術創造研究科教授、キュレーション教育研究センター副センター長)
第2部・レクチャー
講師: 小沢剛(東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授、アーツカウンシルさいたまアドバイザリーボード委員)
ゲスト講師:谷口暁彦(多摩美術大学美術学部情報デザイン学科准教授)

□第2回・第3回 レクチャー&施設・街を巡り学芸員と対話するリサーチツアー1・2
日程:2024年1月13日(土)10:00〜17:00、20日(土)13:00〜17:00
レクチャー「生活都市さいたまについて」
講師:三浦匡史(アーツカウンシルさいたま プログラムオフィサー)
見学施設:鉄道博物館、さいたま市立漫画会館、さいたま市大宮盆栽美術館、さいたま市岩槻人形博物館、有限会社靖月人形、株式会社鈴木人形、その他岩槻市内各所

□第4回講評会
日程:2024年2月17日(土)14:00〜17:00
会場:東京藝術大学千住キャンパス第7ホール
講師:小沢剛、岡本美津子(東京藝術大学副学長(デジタル推進)、同大学院映像研究科教授)、難波祐子(東京藝術大学キュレーション教育研究センター特任准教授)、森隆一郎、三浦匡史

□任意参加のプログラム「さいたま国際芸術祭サポーターミーティング」
日程:2024年2月23日(金祝)
会場: RaiBoC Hall(市民会館おおみや)

□作品プラン/キュレーションプランの提出について
提出〆切:2024年3月1日(金)
応募条件:全6回のレクチャーと講評会、発表会・選考会に参加すること。
募集する作品プラン/キュレーションプラン:さいたま市の地域資源である「盆栽・漫画・人形・鉄道」をテーマに設定した上で、バーチャル空間上で展開する企画。提出の際には、【A】デジタルコンテンツ制作プラン/【B】デジタルコンテンツキュレーション(展示・発表)プランの2部門のいずれかを選択します。奨励金:3月10日(日)実施のプラン選考会では【A】・【B】から2プランずつ採択企画を選定し、各部門1位:20万円、2位:10万円を奨励金として支給します。

□プラン発表会・選考会(一般公開)
日程:2024年3月10日(日) 14:00〜17:00
会場:東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール
選考委員:小沢剛、岡本美津子、谷口暁彦、玉置泰紀(株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室)、森隆一郎、三浦匡史
選考方法:選考委員が事前提出された作品プラン/キュレーションプランの中から各自3本ずつ推薦し、発表者によるプレゼンテーションを実施した上で、当日に審査を行い、各部門から1位と2位を決定します。

主催:アーツカウンシルさいたま(公益財団法人さいたま市文化振興事業団)、東京藝術大学キュレーション教育研究センター
リサーチツアー協力(見学順):鉄道博物館、さいたま市立漫画会館、さいたま市大宮盆栽美術館、さいたま市岩槻人形博物館、有限会社靖月人形、株式会社鈴木人形

講師・選考委員プロフィール(五十音順)

岡本美津子
(プロデューサー/東京藝術大学副学長(デジタル推進)、同大学院映像研究科教授)

プロデューサー/東京藝術大学副学長(デジタル推進)、同大学院映像研究科教授。
数々の番組や映像、イベント等のプロデュースを行う。
NHKEテレで放送中の「2355」「0655」(2010-月〜金放送)、「自由研究55」チーフプロデューサー。Eテレ「テクネ~映像の教室」(2011-)プロデューサー。「毎日映画コンクール」アニメーション部門審査員(2019,2020,2023)、「文化庁メディア芸術祭」海外展(アニメーション分野)総合ディレクター(2018年-2022年)。令和4年度「芸術選奨」選考審査員。

小沢剛
(東京藝術大学美術学部先端芸術表現科教授、アーツカウンシルさいたまアドバイザリーボード委員)

1965年東京生まれ。東京藝術大学修了。代表作品に、地蔵建立、なすび画廊、相談芸術、醤油画資料館、ベジタブル・ウェポン、近年は「帰って来た」シリーズなどがある。西京人やヤギの目など新しい形態のコレクティブにも積極的だ。制作内容やスタイルは多岐にわたる。
主な個展に2004年「同時に答えろYesとNo!」(森美術館)、18年に個展「不完全―パラレルな美術史」(千葉市美術館)など。19年に芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

熊倉純子
(東京藝術大学国際芸術創造研究科教授、キュレーション教育研究センター副センター長)

パリ第十大学卒、慶應義塾大学大学院修了(美学・美術史)。(社)企業メセナ協議会を経て、東京藝術大学教授。アートマネジメントの専門人材を育成し、「取手アートプロジェクト」(茨城県)、「アートアクセスあだち―音まち千住の縁」(東京都)など、地域型アートプロジェクトに学生たちと携わりながら、アートと市民社会の関係を模索し、文化政策を提案する。東京都芸術文化評議会文化都市政策部会委員、文化庁文化審議会文化政策部会委員などを歴任。監修書に『アートプロジェクト─芸術と共創する社会』『アートプロジェクトのピアレビュー—対話と支え合いの評価手法』『アートプロジェクトがつむぐ縁のはなし—絵物語・声・評価でひもとく 大巻伸嗣「Memorial Rebirth 千住」の11年』、共編書に『社会とアートのえんむすび1996-2000──つなぎ手たちの実践』、共著に『「地元」の文化力―地域の未来のつくりかた』など。

谷口暁彦
(多摩美術大学美術学部情報デザイン学科准教授)

ゲームアート、ネットアート、映像、彫刻など、さまざまな形態で作品を発表している。主な展覧会に「超・いま・ここ」(CALM & PUNK GALLERY、東京、2017年)など。企画展「イン・ア・ゲームスケープ:ヴィデオ・ゲームの風景、リアリティ、物語、自我」(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]、東京、2018–19年)にて共同キュレ―ターを務める。

玉置泰紀
(株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室)

株式会社角川アスキー総合研究所・戦略推進室。エリアLOVEウォーカー総編集長。国際大学GLOCOM客員研究員。一般社団法人メタ観光推進機構理事。京都市埋蔵文化財研究所理事。大阪府日本万国博覧会記念公園運営審議会会長代行。産経新聞〜福武書店〜角川4誌編集長後、現在に至る。

Photo: Kenichi Aikawa

難波祐子
(東京藝術大学キュレーション教育研究センター特任准教授)

東京都現代美術館学芸員、国際交流基金文化事業部企画役(美術担当)を経て、国内外で現代美術の展覧会企画に関わる。 企画した主な展覧会に「こどものにわ」(東京都現代美術館、2010年)、「坂本龍一:观音听时 | Ryuichi Sakamoto: seeing sound, hearing time」(M WOODS HUTONG | 木木艺术社区、北京、2021年)、「大巻伸嗣 – 地平線のゆくえ」(弘前れんが倉庫美術館、青森、2023年)、「坂本龍一 | SOUND AND TIME」(MWOODS Museum | 木木美術館、成都、中国、2023年)など。札幌国際芸術祭2014プロジェクト・マネージャー(学芸担当)、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014キュレーター。著書に『現代美術キュレーターという仕事』、『現代美術キュレーター・ハンドブック』(ともに青弓社)など。

三浦匡史
(アーツカウンシルさいたまプログラムオフィサー)

NPO法人都市づくりNPOさいたま 理事・事務局長、および個人事務所 地域生活デザイン代表。
市民参加を促進するためのワークショップの開催、シンポジウムの企画・運営、さまざまな市民団体や個人とのネットワークを形成するためのつなぎ役として活躍し、市民と行政を仲立ちするまちづくりNPOの活動を行なっている。さいたまトリエンナーレ2016ではプロジェクトディレクターを、さいたま国際芸術祭2020ではキュレーターを務めた。

森隆一郎
(アーツカウンシルさいたま プログラムディレクター)

これまで東京都江東区や福島県いわき市で文化施設の新たなあり方を実践、アーツカウンシル東京でPRディレクターを務め、2018年に独立。現在は、アートと社会の間に新しい関係性を育むことを目指す「合同会社渚と」代表社員。ほかに東京藝術大学のプロジェクトや銀座ヴィジョン会議、文化コモンズ研究所などで多様な活動を進める。2022年10月よりアーツカウンシルさいたまプログラムディレクター。共著に「文化からの復興 市民と震災といわきアリオスと」水曜社

アーツカウンシルさいたまについて

アーツカウンシルさいたまとは、市民が暮らしの中で文化芸術と触れ合う機会を増やし、市民生活の多様な場面で創造活動が行われる環境を整備するとともに、文化芸術を通じて将来のさいたま市の姿を考えることを目的に創設された支援組織です。
https://saitama-culture.jp/aboutus/

関連リンク

「空想するさいたま」参加者募集のお知らせ
https://ccs.geidai.ac.jp/2023/11/15/acsaitama/

「空想するさいたま」3/10(日)開催・最終プラン発表会/選考会 観覧募集のお知らせ
https://ccs.geidai.ac.jp/2024/02/10/acs0310/

本事業に関するお問い合わせ

アーツカウンシルさいたま
TEL:048-767-5350 (祝日を除く火曜~土曜 9:00~17:00)
住所:336-0024 さいたま市南区根岸1-7-1-4階