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東京藝大 x みずほFG「アートとジェンダー」共同研究プロジェクト
「アートとジェンダー研究会」

リサーチャープログラム

東京藝術大学(以下、藝大)とみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)は、2022年より「経済だけでなく、アートの力で文化や社会・人びとの生活も豊かで彩ある未来」をともに目指して、様々な連携を深めてきました。その連携をさらに強固にし、かつ持続したものにするため、2023年に包括連携協定を締結しました。

キュレーション教育研究センターでは、藝大×みずほFGの連携事業の一環として、「アートとジェンダー」をテーマにした様々なプロジェクトを展開しています。2024年度は、4名のリサーチャーがそれぞれ抱える「ジェンダー」への問題意識を自主企画として形にするためのサポートを行いました。研究報告書やトークイベント、さらには朗読会など、多様なアウトプット方法で実現に至りました。

伊志嶺絵里子

東京藝術大学、慶應義塾大学、静岡文化芸術大学他 非常勤講師

リサーチ/企画タイトル
オーケストラの楽員及び事務局職員のワーク・ライフ・バランスとジェンダー・ギャップに関する研究

リサーチ/企画概要
本研究の目的は、クラシック音楽業界におけるワーク・ライフ・バランスとジェンダー・ギャップの実態を把握することである。日本オーケストラ連盟の協力のもと、27のプロオーケストラを対象にアンケート及びインタビュー調査を実施した。

 

共同研究者:佐野直哉(東京藝術大学特任講師)、赤木舞(武蔵野音楽大学准教授)
研究協力者:箕口一美(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)

写真:中川周
大石みちこ

東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻教授

リサーチ/企画タイトル
VOICE -Art &Gender- 対談「イラン映画に響く声」

リサーチ/企画概要
イランと日本の映画に長年たずさわってきたショーレ・ゴルパリアンにジェンダーについて聞く。イランと映画の歴史をベースに、映画を作る人々、俳優、映画の中の登場人物、観客の変遷についてひもとく。

写真:中川周
Cho Hyesu

インディペンデント・キュレーター、東京藝術大学大学院国際芸術研究科博士課程在籍

リサーチ/企画タイトル
The Ghost Project「現代百物語」+「百鬼夜行」

リサーチ/企画概要
The Ghost Projectは、日本の伝統的な怪談会「百物語」をモチーフに「現代百物語」を制作。脆弱性、多様性、ジェンダー、ケアなどのテーマを中心に、世界各地のクリエイター99人から現代社会を反映させる物語を集め、社会の中心から追い出された他者を描く。

ⓒthe ghost project, Yongha James Hwang
寺田健人

東京藝術大学美術学部先端芸術表現科助教

リサーチ/企画タイトル
「展覧会、演奏会をより安全な場所にしていくための実践」

リサーチ/企画概要
芸術大学におけるギャラリーストーカー問題をテーマに、トークイベントとアンケート調査を通じて迷惑行為の影響と大学が求められる対策を整理し、被害状況の把握と改善策をリサーチした。

写真:中川周
活動総評

難波祐子

2023年度に立ち上げた「アートとジェンダー研究会」では、「アートの現場における女性の社会進出」をテーマに全5回のレクチャーを実施すると同時に、藝大生・教職員有志とみずほFG社員によるリサーチチームを結成して、アートとジェンダーを取り巻くさまざまな課題について議論を深めてきました。その際の議論をきっかけに、多様な背景や課題を抱えているリサーチャーの皆さんの活動をより広い層に届けることを目的として、2024年度はリサーチャーの皆さんによる研究成果発表の場となるように4つの企画について、助成を行いました。イラン映画を通して知る女性像の歴史と変遷に関するトークイベント、演奏活動におけるジェンダー・ギャップに関する調査研究、国籍やジェンダーなど背景の異なる他者を受容するワークショップとオンラインプロジェクト、芸術系大学におけるギャラリーストーカー問題に関する調査研究、という多彩なテーマを扱う好企画が実施されました。それは東京藝術大学のみならず、現代社会が抱える課題をアートの力を通じてポジティブに可視化・昇華する、という本研究会が目指すべき姿をそのまま体現するようでもありました。今年度はみずほFGの皆さまには、リサーチャーたちの企画を暖かく見守ってくださるという役割に徹して頂きましたが、次年度は何らかの形で一緒に本研究会企画により深くコミットして頂けるようにして、「アートとジェンダー」に関する研究活動をより一層深めたいと考えています。